スーパーシューズがもたらした箱根駅伝の変化
2025箱根駅伝終わりましたね!結果として青学の優勝と、そつのない完成度の高い走りが連続し、他を寄せ付けない結果になりました。
その大きな決定的な差を作ったのはやはり6区でしょうね。
60分を割り込んだ記録がすごい!とか思っていた時代の人間なのでこの記録が異次元すぎてびっくりします。
もちろん、選手の努力と意識の高まりが記録向上へと結果つながっているのは大前提でお聞きいただきたいのですが、コースの特性上「箱根路」というのはどこを切り取っても結構厳しいコースです。よくつなぎの4区・7区なんて僕らの時代は言われましたが、実際に走るとつなぎとは言えないコース特徴はあるし、2区と9区のインパクトに影をひそめる3区・8区の起伏も結構いやらしい。
踏み込みで足首まわりの力を消費する、大腿部腿の消費量が大きかった薄底シューズの時代とは大きく違う!っというのは言わずともわかると思います。
この手の話はいつも「選手の結果をバカにするな!」的な話をいただくので念押しするが、
選手の努力と結果の上でシューズという進化する道具を話しています。昔と今では道具の質が全く異なる。むしろ今の時代の子たちは昔のランナーがまさか草履のような薄さのシューズを多用していたことなんか考えられないでしょう。また、それが一般的に当たり前になったファンランナーには理解できない話だということです。
昨今のスーパーシューズはたぶんことの発端はアディダス「ブーストフォーム」あたりからではないかと思う。今でこそ日の目を浴びなくなったブーストフォームは当時革新的な反発力を有しており、従来のEVAとは大きく異なるもので、軽量化・高反発とランナーの助力ができる一品であったことからアディダスのシューズは多くのファンを獲得したと思います。
そして鮮烈の厚底ブームを生み出したナイキ「ヴェイパーシリーズ」
デビュー当時はこんな厚底だれが履くねんという感じで、エリートにはやや受け入れが進まなかった+高額だったこともあり、浸透が遅かった。それでも私は当時東京都内でマラソンコーチとして携わっていたので、お金を持つ経営者のパーソナルレッスンを担当する上で、こぞってそのシューズを求める人が多くいて感心はありました。
ただ、正直ですが初代ヴェイパーフライは助力が仮にあるとしても走力がそれなりにある選手からするとコストに見合う差異はなく、「スピードに起因する優位性」を示しきれていないという印象で、私も使いませんでした。
しかし、結局使って走る機会になったのが2018に走った「セブインターナショナルマラソン」です。
当時、好意にしていた社長から譲り受ける形で履いてみてくれと渡された初代モデルを使ってレースに参戦しました。
結果として「2時間37分台」と高温多湿な環境で走る大会としては良い結果がでました。感覚的には走力に見合う結果でもあったかなと思うのですが、それ以上に足の横揺れを助長する難しいシューズという印象を抱き、当時から痛みがあった足首の痛みに耐えながら走る結果となって辛かったことを記憶しています。
まあ、僕はよくこの手のシューズを否定的に話すと言われるようになった原因でもある機会ですが、何度も言うけど「スーパーシューズが悪い」なんて言ってなくて、会う人合わない人いるから気をつけてという話をしているだけです。
個人的には通常ジョグで自然と鍛えられる足首の強さを厚底で特に反発力のあるシューズに依存している形で動かすと、足首の剛性を落としてスピードを出しにくい、早い動きへの対応や足首にかかる負担やふくらはぎのストレスが大きくなるのではないかと考えています。Sシューズは腱の弾性を活かした走りを主体的に行う道具なので、その腱を活用する上で大事なバランスを司るふくらはぎの筋肉をあんまり使わないことが懸念されます。
シーズンによっては厚底に頼りすぎると筋力不足でスピードに対応できない可能性があると私は思っています。だから、履き分けをした上で、適度にふくらはぎへの刺激を行い、バランスよく使って鍛える必要があると思っています。
その後、そんな私でも認めざる得ない得意性を持って登場したのが「ヴェイパーフライN%」です。
こちらを初めて履いて走ったのは2019年タイのムアンタイマラソンでした。
この時はすでにヴェイパーN%がすごいという話は世界中を駆け巡っており、このタイのレースでもお金持ち?のランナーは大体履いているという印象で、それこそ走力は絶対に充実していない恰幅のよいタイ人ランナーでも履いていました。
最初の印象は「このシューズはバネが入ってる」でした。
レース直前の流しで本当に初めて足を通したのでびっくりしたのです。こんな走れていいのかと。シューズの購入する決め手が
- 走りやすいか?
- フィットは自分に合うか?
- グリップに問題ないか?
だったのですが、これに「速く走れるか?」が加わりました。店頭の一瞬のトライオンでそれを導き履く選手たちはその圧倒的なスタートダッシュに驚き、多くのランナーがこのシューズを求めた結果、箱根駅伝ではほぼナイキという席巻する状況。まさにナイキ一強時代となりました。
ただ、この時代のシューズにはまだ「速さ」への追求が表現はちょっと微妙かもですが「短絡的」な一面があり、長期的な速さを纏うイメージがなかったなと思います。ただ、選択肢はもうなかったというのが答えで、結果「ナイキしか選べない」という状況で、各社厚底カーボンシューズの独自技術による開発が激化しました。同じ土俵に上がれるモデルを作るために。
そこで功を焦って飛び出したアディダスプロシリーズですが、正直初代モデルは正直イマイチだったと思います。中途半端だなと。
あまりしっかり履き込まれてないのかエリートランナーに適した作りになっていない気もしました。感覚的には2→3へ移行するところで方向性をまとめてきて、現行モデルである4およびEvoは箱根駅伝着用率No1を獲得。まあ、ちょっとEvoは学生ランナーにはあんまり履かせてほしくないというのが本音ですけどね。
正直、お金で記録を買うというちょっと「誤解を招くような表現」をしますが、8万円ほどするシューズをそもそも履かないと勝てないなんて言い出したら学生スポーツの理念から崩れそうなんでマジでやめて欲しい。履いたことはないのでどれほどの違いがあるのか知らないのですが、できれば趣味趣向の範疇やプロランナーとの契約にのみにしてほしい・・・。
話をもどしますが、長期的な厚底運用という点でアシックスが万を持して登場させたメタスピードシリーズは、ヴェイパーのようなわかりやすい反発を少しだけ抑えつつ、接地時の安定性を向上させてレース中の長期的な消費を抑えることでパフォーマンスを加速させている商品だと感じる、私のような難ありのランナーでも納得のシューズが登場しました。
結果、正直ナイキというブランドは素晴らしい革命を起こしたのは事実ですが、マーケットファーストになり、日本のニーズや陸連のニーズに合致しないラインナップになっており、総合的に見るとやはり幅広いレンジのシューズを継続的に出せているアシックスが日本では受け入れられていると感じています。
トップ層の強い走りに引っ張られるようにトップダウンの構図で市民に広がりを見せる中で、過去よりもシューズの制約もそうですが、ランナーが選択する上での知識をyoutubeなどから得やすくなったことで、自分に合う形を模索する方も増えているんではないかと思います。
ただ、まあそんなにトップラインのシューズの差異はなくなってきているし、従来の感覚で「自分に合うかどうか?」が最も重要な判断基準になってきました。地方にいるとわかるのですが、そうしたトップラインはバイヤーが売れないからという理由で置かれていることが少ないので試すことができないという大きな問題も抱えています笑
あれ、すみません。スーパーシューズと箱根駅伝コースの親和性について全然書けてないや。またいずれ書きますね。